Column
院長コラム
痛みを生み出す脳への道~痛み刺激の伝導路~
2025年10月03日
皆様、こんにちは。朝晩の空気もすっかり冷たくなり、季節の変わり目を感じますね。 「おーい、もう10月だぞ。」と言いたくなるのですが、今年は夏が長かったためか、まだクリニックの灯りにカナブンが寄ってきています。こんなに暑い夏が続くと、昆虫たちも秋がいつなのか分からなくなってしまったのかもしれません。
さて、先日、企業様向けに「腰部脊柱管狭窄症と治療薬剤」をテーマとした講演を行いました。講演の要点は、「痛みの伝達経路」と「薬剤の作用点」を理解することが、痛みをコントロールし、快適な日常生活を送るために重要である、ということです。このコラムをお読みの皆様も、「痛みがどこで始まり、どのように脳へ伝わるのか」を知ることで、痛みとの付き合い方が一歩先に進むかもしれません。ぜひ、少しお付き合いください。
痛みの伝達経路を水道管に例えてみる
このイラストは、全身の主な神経組織を表しています。脳からはじまる神経は脊髄につながり、頚部から腰部まで続いています。脳から脊髄までは文字通り「神経の本幹」であり、中枢神経と呼ばれます。脊髄から四肢の末端まで伸びる黄色い線が末梢神経です。神経のネットワークを上水道に例えるなら、「脳=浄水場」「脊髄=大きな水道管」「末梢神経=各家庭への小さな水道管」といったイメージです。
私たちは様々な感覚を脳で処理しています。末梢に入った刺激が痛み刺激であれば、それが脳に伝わって「痛い」と感じるわけです。その伝達経路を単純化したものが次のイラストです。
体の各所に入った痛み刺激は、末梢神経を通ってまず脊髄へ伝達されます。脊髄に入った刺激は上行し、脳の視床へ。その後、視床から大脳皮質へ伝達され、ここで初めて「痛い」という感覚が生成されるわけです。
最初の痛み刺激は、ケガによる急性的な炎症であることもあれば、変形性関節症などの慢性疾患による持続的な刺激であることもあります。また、炎症が治まった後も、末梢神経が「勝手に興奮」するようになってしまい、痛み刺激を発生させるケースもあります。
「痛み止め」は作用点が様々
世の中には多くの「痛み止め」がありますが、各薬剤はこの痛みの発生メカニズムや伝達メカニズムをターゲットにして創薬されています。患者様にとっては「痛み止め」とひとくくりになるかもしれませんが、その作用点や作用メカニズムは様々です。担当の医師は、患者様お一人おひとりの痛みのメカニズムを考えたうえで、数ある鎮痛薬の中から最も適切なものを選択して処方しています。次回の院長コラムでは、主な鎮痛薬の種類と、それぞれの「作用点」について詳しくお話ししようと思います。今しばらくお待ちください!
理事長交代のご報告
最後に、この場を借りてご報告申し上げます。2025年10月1日をもちまして、医療法人社団牧野整形外科医院の理事長を、牧野督太郎より牧野孝洋が引き継ぎました。「運動器の健康を通して地域社会に貢献する」という理念のもと、患者様お一人おひとりに安心して質の高い医療を受けていただけるよう、スタッフ一同、より一層の努力を重ねてまいります。新たな治療法も広がる中、保険診療・自由診療の分野を問わず日々研鑽を積み、皆様に適切な医療を提供できるよう努めてまいります。今後とも変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
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