Column
院長コラム

末梢神経と筋肉に着目した肩こり

2024年04月27日

みなさま、こんにちは。

いよいよゴールデンウイークです。みなさまもご旅行・レジャーや、日常でできずにたまったことの処理、はたまた春の農作業の予定と、目白押しのことと思います。

4月半ばを過ぎた頃から、外作業をするようになったからと、腰痛・肩こりの患者様がドッと増えました。

今日は肩こりシリーズの続きとして、末梢神経と筋肉に着目した肩こりについてお話しさせてください。

 

前回は頚椎の椎間関節に着目した肩こりについてお話ししました。でも、もちろん関節だけが肩こりの原因になるわけではありません。

肩の周囲にもたくさんの筋肉と、それを支配する神経があります。

「首を動かしてもそんなに痛いわけではないんだけど、肩の周りが張ったように痛いんだよねえ」

こんな感覚を自覚される方、少なくないと思います。私がこういった場合、着目するように心がけているのは、筋肉では棘上筋・棘下筋・肩甲挙筋・小/大菱形筋であり、末梢神経では肩甲上神経・肩甲背神経です。これらの関係は、次のようになります。

 

肩甲上神経棘上筋・棘下筋、などを支配)

肩甲背神経肩甲挙筋・小菱形筋・大菱形筋、などを支配

イラストにあるように、これらの神経はいわゆる「肩こり」で自覚する場所にある筋肉を支配しています。その根っこ(始まり)は、主に頚椎の椎間孔から出る第5脊髄神経(C5神経根)です。C5神経根からこれらの神経に分枝して名前を替え、頚肩部の様々な筋肉の間をくぐりぬけてこれらの筋肉を支配します。神経は電線みたいなもので、この経路のどこで障害を受けても、これらの支配領域に障害をきたす可能性があります(筋肉の機能不全や、それによる痛み)。例えば、C4/5の椎間関節の炎症からこれらの神経に炎症が波及することもありうりますし、筋肉の間を通り抜けるときの滑走障害から神経の炎症や伝導不全が生じることも考えられます。

実は、これらの神経は主に運動神経(筋肉を動かす神経)であり、感覚線維(痛み等の感覚を伝導する線維)は含まれていないとされています(教科書が100%正しいとは限りませんが…)。しかしながら、これらの筋肉の過緊張などによって引き起こされたと思われる痛みやこれらの筋緊張を緩和させることが有効と考えられる病態には、これらの神経への介入が効果的と考えられ、実際しばしば症状の改善に役立ちます。

 

実際、神経のどこで障害を受けているかを判断することは難しいことが多いですが、経験上障害を受けやすいとされる場所の報告はある程度決まっており、さらに現在はエコーを用いてピンポイントで疑わしい場所にブロックやハイドロリリースができるようになりましたので、当院では患者様の状態を見ながらこれらの神経にターゲットを絞って治療介入しております。

 

時に難渋する「肩こり」の診断と治療には患者さんの協力も不可欠ですが、各種薬物・ブロック療法に、物理療法や理学療法を組み合わせて少しでも痛みの改善を得られるよう努力しております。みなさま一緒に肩こりと向き合っていきましょう!

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