Column
院長コラム
頚椎椎間関節由来の肩こり
2024年03月01日
みなさまこんにちは。
3月になりました。年始の能登半島地震から3か月たちますが、被災者の方々にも暖まる春が訪れることを祈念しております。
さて本格的な春を前に(この原稿を書いているときは外は雪が降っています。。。)、気持ちを新たに今年の上半期のテーマ「肩こりについて」、今日は頚椎の椎間関節からみた肩こりについて、お話しします。
頚椎の椎間関節とは、図のように頚椎の第2頚椎から第7頚椎までの頚椎の後方要素の接合部を指し、左右1対ずつ存在します。
膝や足首、手首とかと同じで、頚椎も各々の骨が連続していて関節を形成してつながっています。膝や足首、手首も関節を傷つけると(捻挫や打撲を想像してみてください)そこが痛みますよね?それと同様に、頚椎も椎間関節を傷めてしまうともちろん痛みを生じます(当たり前の事を言って申し訳ございません…)。
では、どこに痛みが生じるでしょうか。ここが肩こりに関連して面白いのです!
この図は、頚椎椎間関節の障害によってもたらされる痛みの領域を図にしたものです。このように、第2頚椎から第4頚椎までのつなぎめの椎間関節からの痛みはいわゆる「首」にとどまります。一方、第5頚椎から下の頚椎の椎間関節の痛みは肩甲骨や鎖骨あたりにまで分布します。第6頚椎/第7頚椎の椎間関節の痛みは、もはや首というよりは肩甲骨から肩の後ろ辺りまで広がります。いわゆる「肩こり」でイメージする痛みの領域は、このあたりをイメージしている方が多いのではないでしょうか?
このように、四肢の関節と違い、頚椎の関節の痛みは、障害された部位と痛みが投射する部位が異なるのが、診断を難しくします。「肩こりで肩甲骨あたりが痛いって言うてんのに、なんで頚椎のレントゲンを撮るねん(怒)???」と思われることがあろうかと思いますが、脊椎外科医としては見過ごすことができないのです。
さらにややこしいのは、
- 痛みの投射する領域にオーバーラップがある
- レントゲンの所見は特に年齢を重ねた方には複数の関節に傷んだ像が認められることが少なくなく、どこが発生源なのか絞り込むことが画像だけでは難しい(もちろん複数個所から痛みが生じていることもあります)
ため、四肢と違いたくさんの関節が密集した頚椎椎間関節由来の痛みの発生源を絞り込むことは実は容易ではありません。
今回はなんとなく言い訳がましい回になってしまいましたが、当院では患者さんに協力していただき、レントゲン透視や超音波を使いながら各関節を選択的にブロックしたり、炎症性血流の亢進を確認しながらどの関節が発生源を特定しながら診断と治療を並行して行っております。もちろん、関節以外の要因の痛みも念頭に置きながら、診察・治療を進めていきます。
時に難渋する「肩こり」の診断と治療には患者さんの協力も不可欠ですが、各種薬物・ブロック療法に、物理療法や理学療法を組み合わせて少しでも痛みの改善を得られるよう努力しております。みなさま一緒に肩こりと向き合っていきましょう!