Column
院長コラム
骨粗しょう症による「せぼね」の骨折
2022年06月14日
こんにちは。
とうとう北陸地方も梅雨入りしました。
私は湿気ると髪のくせ毛が強くなるので、この季節は憂鬱です…
さて、前回のコラムで、骨粗しょう症による骨折で多い部位の1つに脊椎椎体骨折があることを紹介させていただきました。私は脊椎外科を専門に診療しておりますので、脊椎椎体骨折について少し深く説明させて頂きます。
左の写真は骨粗しょう性による椎体骨折の患者さんのCTです。〇で囲った2つの椎体が潰れてしまっています。点線で囲った部位は固まっていますが、実線で囲った部位は骨の中に黒い部分(=空気)が写っており、固まらずにグラグラした状態です。
このように
- 骨粗しょう症による脊椎椎体骨折は複数の椎体で起こることが稀ではない。
- 骨折後、固まらない(グラグラしたまま)ことがある。→痛みが遷延する。
のが特徴です。
また、骨折したことに気づかないこともあります(あるCMで「いつの間にか骨折」として紹介されていました)。日本の調査研究によると、無症状の人を含めた脊椎椎体骨折の有病率は女性で60歳代、70歳代で約25%、80歳以上では40%を超えています。男性では60歳代では約10%ですが、70歳代では約27%、80歳以上では女性より多く50%を超える結果でした。(Horii C, et al. J Bone Miner Metab 2019: 844-853)
また、骨折した後、くっつかずにグラグラが残るのは、10%-30%と報告されております。(中村博亮ら.脊椎脊髄 2009: 240-246)
さらには。。。
骨粗しょう性椎体骨折は椎体骨折の数が増えれば増えるほど、骨折した方の年間死亡率が増えることも示されています。(Kado DM, et al. Arch Intern Med 1999: 1215-1220)
このように、骨粗しょう症を放置しておくと、脊椎椎体骨折のリスクがあがり、うまく癒合しない場合は痛みが遷延したり、寝たきりになれば命の危険にもつながる、といった様々な弊害が起こる可能性があるのです。
骨折を起こした後の治療は、しばしば困難を極めます。次回からは骨粗しょう症による脊椎椎体骨折の治療をお話しします。
ただ、骨折を起こしてからの治療より骨折を予防する治療のほうがはるかに大事であり、有効です。そのためには骨粗しょう症の早期発見が第一です。当院ではWHO(世界保健機構)や日本の骨粗鬆症診断ガイドラインでも推奨されている大腿骨と腰椎の骨塩定量が同時に可能な骨塩定量検査を導入しております。
受診当日に検査可能ですので、「転ばぬ先の杖」ならず「骨折する前の検査」、としてお気軽にお申し付けください。