Column
院長コラム

目立たない下肢神経痛の代表選手、大腿神経痛

2025年06月08日

皆様こんにちは。そろそろ空気も湿ってきて梅雨入りも目前です。例年通り、くせ毛がクルクルしだし、憂鬱な朝を迎えています。

さて、前回は坐骨神経痛のお話をしましたが、今日はそのお友達の大腿神経痛のお話をしようと思います。大腿神経痛、あまり耳にしたことはないかもしれませんが、坐骨神経痛に負けないくらいメジャーなものです。当院の腰から下肢にひびく神経痛では坐骨神経痛と頻度はどっこいどっこいといった印象です。なのに、坐骨神経痛ばかり有名になり…と、かわいそうな神経痛です(笑)。

 

前回と同様に、まず図1をご覧ください。大腿神経を青く塗りました。始まりは第2~第4腰髄神経から始まります。これらが吻合し骨盤内を前の方に進み、恥骨の上から骨盤の外に出て大腿部の前面を膝の周りまで下降します。支配する領域は太ももの前面や内側、膝の前面ですので、大腿神経に刺激が入ると大腿前面や内側から膝の前面にかけて放散痛やしびれが生じます。(前回院長コラム・「坐骨神経痛って何?」の図2のL2-L4の領域になります)膝や股関節が悪いと思っていたら、実は大腿神経痛だった、ってこともしばしばあります。

坐骨神経痛との疼痛領域の違いをまとめますと、

  • 大腿神経痛:大腿の前面や内側~膝前面
  • 坐骨神経痛:臀部・大腿後面~下腿、足

となります。

どういった疾患で大腿神経に刺激が入るのか、は坐骨神経痛と同じく2つの要因があり、1つは腰椎由来、もう1つは骨盤由来がほとんどです。

腰椎由来の疾患は前回院長コラム・「坐骨神経痛って何?」と全く同じなので割愛しますが、罹患した腰椎の高さで、大腿神経痛になるか坐骨神経痛になるか、運命が分かれます。第4腰髄神経は大腿神経にも坐骨神経にも分布しますので、第4腰髄神経由来の障害(例えば、L3/4の椎間板ヘルニアなど)は坐骨神経痛にも大腿神経痛にもなりえます。

骨盤由来の疾患では、腸腰筋(股関節屈曲するための骨盤内を走る筋肉)の過緊張や、恥骨周囲をきつい服やベルトを着用したりして圧迫される外側大腿皮神経(大腿神経の枝)障害骨盤内の腫瘍、疾患ではないですが妊娠(子宮に圧迫される)が挙げられます。

 

大腿神経痛も、坐骨神経痛と同様に症状から見た病名です。徒手検査や画像診断での診断のあとの治療も坐骨神経痛と同様です。近年はエコーを用いた腰髄神経周囲のハイドロリリースや硬膜外・神経根のブロック治療が以前より相当簡便に行えるようになり、特に急性期の除痛に有効であると感じております。当院では患者さんの希望に合わせ適時ハイドロリリースやブロックを施行し除痛を図りながら、原因となる疾患に合わせ適時運動療法や内服調整し日常生活の復帰を目指しております。一方、いたずらに保存治療にこだわると適切な手術のタイミングを逸することになってしまうのは坐骨神経痛と同様であり、必要な場合は高次医療機関に紹介させて頂いております。腰から下肢への放散痛でお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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