Column
院長コラム
子供の腰痛~腰椎分離症について~
2023年12月27日
皆様こんにちは!2023年もいよいよあとわずかとなりました。皆様にとって今年はどんな1年でしたか?私個人も当院としても、患者様からお褒め頂いたこと、感謝の言葉を頂いたこともありましたが、逆に患者様に迷惑をおかけしたこと、至らずに反省すべきところも多々あり、いろいろ経験させて頂いた1年でした。来年も職員一同精一杯診療活動に励む所存であります。宜しくお願い致します。
さて、2023年最後の院長コラム、今日は冬休みということで、子供さんの腰痛の原因の一つである腰椎分離症についてお話ししようと思います。
腰椎分離症とは、腰の疲労骨折であり、思春期までに発生することが多いのが特徴です。腰椎の椎弓狭部と呼ばれる、骨が薄い部分に過剰な力学的負荷がかかり、骨髄浮腫(骨の打撲)から始まって徐々に骨が割れて(分離)、疲労骨折に至るものです。第5腰椎に最も多く発生します。思春期までの骨はまだ成長途上であり、構造が不完全である状況です。一方筋力は大人並みについてくるので、骨の強度が運動負荷に負けてしまい、骨に傷が入ってしまうのです。
腰を後に反ったりねじったりした時に、椎弓峡部に負荷が最もかかるので、このような姿勢を取るスポーツならどんなスポーツでも生じる事があります。いいかえると、スポーツ少年・少女に多いケガです。日本人のデータでは約6%の人に分離症があると言われております(Sakai T, et al. J Orthop Sci, 2010)。
分離症には初期、進行期、終末期の3段階があります。
初期はまだ骨が割れるか割れないか、の段階で、X線検査では同定が難しいです。もちろん腰痛には、筋肉痛や関節痛による腰痛もありますので、すべてが分離症ではありません。腰を反った時やねじった時の腰痛が筋肉痛や関節痛なら1-2週間の安静で取れるはずです。よって短期間の安静でも痛みが取れない場合はMRI等の検査をするように当院ではしております。また、最近はエコー検査によって、分離症初期の骨の表面に水腫や血流シグナルが見える事が報告されており、当院でも積極的にエコー評価を行っております。
進行期や終末期になるとX線検査でもはっきりすることがほとんどになります。
先天的に腰椎の構造異常(潜在性二分脊椎など)で骨強度不足があるため、特に力学的負担の多くない生活をしていても分離症に至ることがあります。
分離症の治療は、各ステージによって異なります。初期や進行期では腰椎コルセット装着していただき運動中止し、骨癒合を目指します。超早期(分離する前の骨髄浮腫の段階)や初期で、90~100%の骨癒合率(平均2.5か月)、進行期で80%の骨癒合率(平均3.6か月)と報告されており(Sakai T, et al. Spine, 2017)、この段階の患者さんは、がんばって3~6か月の運動中止をお願いしております(運動できないストレスが大変申し訳ないのですが、骨癒合を目指すのであれば、ここは心を鬼にして運動中止もしくは段階的な運動復帰を個々の症状と画像所見で判断しております)。
一方、終末期は残念ながら骨癒合はできません。ただし、分離しているからスポーツできないわけではなく、痛みを抑える対処療法や体幹筋力強化をしながらスポーツを行っていただきます。実際、プロスポーツ選手の分離症は高名な選手でもよく耳にしますし、トップアスリートとして活躍されておられる方も多いですので、終末期であるから絶望しかない、といった考えは不要です。
いずれにせよ、患者さん個々のスポーツに対するライフプランの位置づけによって、分離症の治療や付き合い方が異なります。一対一対応ではないため、当院では患者さんの意向を第一に考えたいと思い治療しております。
長々となりましたが、今年も院長コラムにお付き合いいただきありがとうございました。来年も皆様の疑問にお答えできるような院長コラムにしていきたいと思います。新しい一年、世間も皆様お一人お一人も、幸せな日々を過ごせることを祈っております。来年もよろしくお願いいたします。