Column
院長コラム

思春期特発性側弯症の治療

2023年08月23日

皆様こんにちは。今週から始業式という学生さんも多いと思います。夏休み、楽しみましたか?夏休み明けテスト、準備できましたか?うちの子供たちは、大阪弁で言うと「シバくぞマジで」の状況です(-_-;)。さて今日は、夏休み特別企画・側弯症シリーズ最終回です。最後に、思春期特発性側弯症の治療について、お話しします。この治療はあくまでも“思春期(主に小学校高学年~高校生)”に行う治療としてお読みください。

 

いきなり、今日のポイントを書きます。

  • カーブが20度を超え、成長がまだ見込まれる場合は装具療法
  • 保存治療(手術以外)で、カーブの進行が科学的に証明されている治療法は装具治療
  • 胸椎のカーブであれば50度、腰椎のカーブであれば40度を超えてくれば手術の適応

 

①装具治療

側弯症に対し、科学的にカーブの進行が抑制されると証明されている治療は装具治療です。カーブが20~40°までの方が装具の大雑把な適応となります。成長(身長の伸び)が見込まれる間はカーブの進行リスクがありますので、この期間が装具治療の適応期間となります。装具はカーブの頂点の部位によって使い分けることが多いですが、いずれにせよ各患者さんの体型に合わせたオーダーメイドの樹脂と金属を組み合わせた硬性装具が基本となります(腰痛などで処方されるベルトタイプのものとは比べ物にならないほどがっちりしたものです)。作成にも専門的な知識が必要ですので、大学病院やそれに準じる施設で、専門の義肢装具士がこられるところで作成することが望ましいと考えます。

装具の装着時間とその効果の関連については、思春期特発性側弯症の装具適応患者さんのうち1日12.9時間以上の装具装着(半日以上の装着)で手術回避できたものが90%以上であったと報告されました(N Engl J Med, 2013)。さらにその後、骨成熟度別に検討した研究がなされ、骨未成熟な子供さん(骨盤のレントゲンで判断しますが、身長の伸びのスパートが始まる前の子供さんと思ってください)においては手術に移行することが多く(装具装着でも44%)、1日18時間以上の装着でも多くが手術に移行したと報告されております(J Bone Joint Surg Am, 2016)。これらの結果から、少なくとも半日以上、できれば長い時間装着すればするほど、手術回避の可能性は高くなるということが分かります。私も側弯症の患者さんを多く見ていたころは、「お風呂と体育の時以外はなるべくつけるように頑張ろう」とお話ししていました。成長期が終われば、徐々に装着時間を短くして離脱を図ります。

 

装具治療は数年にわたることがほとんどで、子供にも親御さんにも大変ストレスであることは想像に難くなく、特に子供さんに寄り添ったサポートが重要となります。

 

②手術療法

手術は側弯の角度を矯正し、進行を予防することが目的です。固定の範囲や手術の方法は各患者さんのカーブの種類や固さによって検討されます。近年は後方(背中側)から各種インプラントを用いた手術が多くを占めます。手術は大きな手術にならざるを得ず、手術時間も3~6時間程度かかることが多かったです。ただ、子供さんの回復力はいつも感心させられ、こんな大きな手術でも1週間後には多くは結構歩き回れるようになり、2週間後に退院するような方が多かったです。

ただし、当然周術期の合併症や、術後長くたってからも起こりうること(固定範囲以外の側弯の増強や、非固定部での椎間板の変性など)は当然あります。このあたりはこのコラムでは割愛します。手術となった場合は担当医とよくご相談ください。

 

その他、側弯症の体操はいろいろと報告されております。ただし、科学的に有効と証明されたものがないのが現状です。これは、効果がないというより、効果の科学的な証明が難しいことが、側弯症体操の位置づけを難しくしている要因と思います。

 

以上、側弯症のお話しでした。側弯症のお子さんや親御さんの疑問に少しでも答えることができれば、大変うれしいです。

 

クリニックの側では夜9時になると片山津温泉の花火の音が聞こえます。花火が終われば、いよいよ秋です。はやく涼しくなってほしいのは、私だけでしょうか…

皆様、暑い日が続いておりますが、体に気を付けてお過ごしください!

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