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院長コラム

思春期特発性側弯症が引き起こす症状は?

2023年08月15日

みなさまこんにちは。夏休みも残り少なくなってきました。「夏休み特別企画 側弯症シリーズ」といいながら、夏休みが終わってしまいそうなのに完結できておらず(-_-;)。今日は大阪の自宅はせっかくのお盆休みなのに台風直撃で外出できず(電車も飛行機もコンビニもスーパーマーケットも止まっています!!!)、夏休みの課題に追われる長女・次女と同様残した課題を頑張る日と捉え(-_-;)、思春期特発性側弯症に伴う症状について書かせて頂きます。

次の3つについて、考えてみます。

  1. 外見
  2. 痛み
  3. 内臓への影響

まず、外見ですが、写真のように

  • 左右の肩の高さの非対称
  • ウエストラインの非対称
  • 肋骨の盛り上がり(肋骨隆起)

が問題となります。これらの外見上の非対称性は、カーブが大きくなると目立つようになり(Aulisa AG, et al. Spine, 2018)、患者さんが自分の体形に対して不満と感じる(マイナスイメージを持つ)ようになることが分かっています(Parent EC, et al. Spine, 2010)。

痛みについては、新潟県の学童調査から、側弯症では痛みを有する者は側弯のない者に比べ約2倍の頻度であったことが報告されました(Sato T, et al. Eur Spine J, 2011)。

 

私も大阪大学病院での勤務時代に調べてみると(Makino T, et al. Spine, 2019)、結果が図のようなものになりました。興味深かったのは、カーブが柔らかい場合や自分の体型に不満があると痛みを感じやすいということでした。

過去には、子供のころに側弯症となった方と、そうでなかった方をそれぞれ50年後にどうなったか調べた研究があります。子供のころに側弯症となったの方の77%で、50年後(高齢者に差し掛かったころ)に痛みがあると答えた一方、子供のころに側弯がなかった方では痛みの有訴率は35%にとどまり、子供のころの側弯症が大人になってから痛みと関連するようになる可能性が示唆されています(Weinstein SL, et al. JAMA, 2003)。

内臓への影響について、胸郭の変形が息切れや肺活量の低下を来す可能性が危惧されます。一般的にカーブが100°を超すと呼吸器への悪影響が危惧されるようになります。

まとめると、カーブの角度が大きくなると外見だけでなく心理面(ボディイメージの悪化)や内臓(特に呼吸器)への悪影響が危惧されるようになります。裏返すと、小さなカーブではほとんどの場合、側弯症のある無しで症状や生活に大きな違いはありません。以前に、胸椎のカーブでの手術適応は50°程度、腰椎のカーブでの手術適応は40°程度を超した場合とお話ししましたが、これはこの角度を超えると成長後も進行するリスクがあり、また進行すれば高齢になっても症状がでる可能性があり、この角度でうまく外科的介入の線がひけるのです。よって、治療介入するタイミングを逃さないために、定期的な経過観察が必要になります。

次回、最終回は側弯症の治療についてお話しさせて頂きます。

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