Column
院長コラム
思春期特発性側弯症の発症や進行に関係する生活環境は?
2023年08月02日
毎日毎日、本当に暑い日が続いております。。。
さて、夏休み特別企画「側弯症シリーズ」ですが、今日は思春期特発性側弯症に関連する環境(日常生活の状況)の影響についてお話しします。
「ん???原因不明であるから特発性って言ったんちゃうの?」
と思っていただいた方、ありがとうございます。その通りなのですが、
「原因不明」であるから「原因がない」わけではありません。特発性側弯症は遺伝因子と環境因子が合わさって発症する、「多因子遺伝病」であると考えられています。
遺伝因子については後日お話しするとして、環境因子とは、疾患に関係するあらゆるライフスタイルの因子のことを指します。現在調査で分かっている環境因子について、いくつか結果をお話しします。
よく側弯症の患者さんや親御さんから下のような質問があります。
・かばんの重さや種類、持ち方に関係ありますか?
・勉強時間や睡眠時間、寝ている姿勢は関係ありますか?
・本人の体格や、母体の妊娠や出産の状況は関係ありますか?
・部活(スポーツや文化活動)は関係ありますか?
このような質問に対し、慶応大学のグループが調査し発表されております。その結果をまとめるとこのようになります。
私が大阪大学で側弯症の外来をしている際も、患者さんに「運動はなにかしてますか?」とか「部活なにやってますか?」と聞くとクラシックバレエをされているお子様や吹奏楽部のお子様が多かった印象です。学会で側弯症の高名な先生に質問した際にも、「確かに吹奏楽部の方、多い印象ですね。」とおっしゃっていました。クラシックバレエや吹奏楽(管楽器の演奏)のなにが側弯症の発症や進行にかかわるかはわかっていませんが、これが環境因子というものなのかと感じました。
逆に、運動部のお子さんには少なかった印象です。研究結果でも、バスケットボールやバトミントンは発生リスクが約半分と記されていました。一番質問されることの多い、鞄のタイプ(リュック型・たすき掛け型・手提げ型、荷物の重さ)は側弯症の発生や進行に無関係でした。鞄にはそれほど神経質になる必要はないようです。
ただし、これに当てはまるからと言って、必ず側弯症になったり進行したりするわけではありません。「多因子遺伝病」は「遺伝子で側弯症になりやすい体質をもっている」上に「環境因子」が加わって発症すると考えられているため、同じ環境に置かれても疾患になりやすい人となりにくい人がいるためです。つまり、同じことをしていてもなる人とならない人がいる、ということです。どのように発症や進行を予防できるか、進行の予測ができるか、については今後の研究が待たれるところです。
次回は側弯症が引き起こす症状について、お話しさせて頂きます。