Column
院長コラム

腰痛のお話 ~ぎっくり腰~

2023年02月05日

皆様こんにちは。1月末の強い寒波、無事お過ごしになられましたでしょうか。路肩や屋根の雪はまだ残っており、転倒等には十分お気を付けください。とはいえ、徐々に日が長くなってきていることも感じられ、もう少しで春が来ると思うと、少しほっとします。

 

この雪で、雪かきしてから腰が痛くなったと受診される患者様が多い今日この頃です。

雪かきに限らす、「重いものをもって」「中腰になって」「ちょっとひねって」と、日常の何気ない動作で急に腰痛が出ることを経験されたことのある方、少なくないのではないでしょうか。

まさにこれは、前回のコラムで書かせていただいた「急性腰痛」の典型で、「ぎっくり腰」とよく称されます。西洋医学が日本に紹介された当時の医学の中心であったドイツでは急性腰痛はHexenschuss「魔女の一撃」と呼びます。英語でもWitch’s shotと訳されることがあり、まさに「魔女の一撃」直訳です。いきなり激痛が走ることを魔女の仕業と思われていたようです。

 

このような急性腰痛、今日は痛みのメカニズムを考えてみようと思います(私見の部分が多いことはご容赦ください)。

痛みを組織障害(→侵害受容性疼痛)として考えると、

  • 腰部の筋肉由来
  • 腰椎の椎間関節由来
  • 腰椎の椎間板由来
  • 仙腸関節由来
  • 椎体の骨折由来

をまず想定して、患者さんの診察に入ります。

筋肉由来の痛みであれば、その筋肉に圧痛があったり、伸張やストレスをかけると痛みが誘発されたりする可能性が高いです。エコーでは筋組織の高輝度変化が認められることが参考になります。

椎間関節由来であれば、その関節周囲に圧痛があったり、エコーで関節周囲の炎症(血流シグナルの増強)や水腫が認められたりすることもあります。

椎間板由来の場合は、圧痛がはっきりしませんが、独特のしびれたような腰全体の痛みが前かがみで強くなったり、神経にまで刺激が及ぶと足へと痛みが放散してきたりする場合があります。この場合は神経障害性疼痛の要素が強くなります。MRIでの椎間板線維輪の破綻や椎間板に接する椎体の輝度変化が有用な所見になることがあります。

仙腸関節由来の場合は、片足に体重をかけるとすごく痛かったり、仙腸関節特有の圧痛部位があったりします。

骨粗鬆がベースとなる方に多いですが、椎体骨折がレントゲンで明らかになる場合があります。

 

重要なのは、画像の所見も重要ではありますが、あくまで画像は参考所見であり、身体所見(圧痛部位や痛みの誘発される体制)がもっとも痛みの原因を考えるときに大事だということです。なぜなら、レントゲンで筋肉は映りませんし、椎間関節や椎間板のレントゲンでの加齢変化は年を重ねると当たり前のように認められる所見であり、重複することもままあることですので、それが痛みの原因かどうかは診察の所見が頼りになるからです。

 

いろいろな組織が腰痛を引き起こします。次回のコラムからは、各組織の構造や痛みの経路について掘り下げていこうと思います。

 

当院では、急性腰痛に対してその原因を画像や診察所見から推定し、ブロック注射(原因と思われる組織に直接ブロック、痛みの伝導路である神経をブロック、など)や投薬、リハビリテーションなど、なるべく負担の少なくかつ効果があると考えられる方法を提案させて頂き治療させて頂いております。MRIも、提携させて頂いているご施設でこちらから予約し撮影させて頂くことも可能です。急な腰痛だけではなく、長く続く腰痛等でお困りの方、お気軽にご相談ください。

 

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