Column
院長コラム
骨粗しょう症の薬物治療
2022年11月01日
こんにちは。11月に入りました。もう1月もすれば北陸の冬が来ます。朝や夜の透き通った心地よい空気と太陽の光を今は愉しみながら、秋を過ごしております。
さて、骨粗しょう症についてのお話、今回は最後に骨粗しょう性の薬物治療について、簡単に紹介させて頂きます。このコラムの最初で、私たちの骨は生きている間ずっと、古い骨を吸収しながら(骨吸収)、新しい骨をつくる(骨新生)ことをくりかえし、知らない間に骨が絶えず置き換わっていることをお話ししました。この「骨吸収」と「骨新生」のバランスが崩れ、骨吸収が骨新生を上回ってしまうと、骨の構造がそぞろになってしまい、骨粗しょう症に至ります。
そのため、治療のターゲットは
- 骨吸収を抑制する
- 骨新生を促進する
ことが基本となります。
特に、骨粗しょう症の程度がそれほどひどくない場合の第1選択にあがるのが骨吸収の抑制を目的にしたビスフォスフォネート製剤です。
主には飲み薬で、毎日服用するタイプ、週1回服用するタイプ、月1回服用するタイプ、がよく使用されます。患者さんのライフスタイルで選択することが多いです。
内服する場合、起床時にコップ1杯の水で飲み、30分程度は横にならずに居ていただくことが必要なのが特徴です。
もし内服が難しい場合や、より薬剤の効果を高めたい時のために、点滴や静脈注射のタイプもあります。
閉経前後の女性の場合は、女性ホルモン(エストロゲン)受容体に働きかけて、閉経後の女性ホルモン減少の骨に対する悪影響(骨吸収の亢進)を抑える薬剤も候補に上がります。
重症の骨粗鬆症に対する薬剤も、近年急速に進歩しました。骨を壊す細胞(破骨細胞)の働きを強烈に抑える抗体製剤(抗RANKL抗体)が、骨吸収を抑える薬剤では最も強力です。半年に1回の皮下注射を行います。
また、これまでは骨吸収を抑える薬剤が主でしたが、骨新生を促進(骨を作る)する薬剤も登場しました。その一つが副甲状腺ホルモン製剤です。皮下注射を行うもので、毎日または週2回患者さんご自身が皮下注射する製剤です。2年を限度に使用するものです。また、抗スクレロスチン抗体という、骨の分化を抑えてしまうスクレロスチンをブロックすることで骨新生を促す製剤も登場しています。こちらは月1回の皮下注射を行うもので、1年間の使用が原則となります。これらの骨新生を促進する製剤の登場で、重症骨粗鬆症の治療は大きく進歩しました。
また、骨に対する作用はマイルドですが、骨の原料となるカルシウムや、カルシウムを体内に吸収するために必要なホルモンである(活性型)ビタミンDも、上記の薬剤に併用して使用することが多いです。原料がなければ、せっかくいい薬剤を使用しても骨が増えないからです。
簡単にまとめますと、
- 骨吸収を抑制する:ビスフォスフォネート製剤、女性ホルモン(エストロゲン)製剤、抗RANKL製剤
- 骨新生を促進する:副甲状腺ホルモン製剤、抗スクレロスチン製剤
- カルシウムの維持:カルシウム製剤、(活性型)ビタミンD
となります。
どの薬剤も特徴的な使い方や、それぞれの副作用もあります。
当院では各患者さんのライフスタイルや併存疾患に合わせて薬剤を選択し、副作用の観察を行いながら骨粗しょう症の治療にあたっております。
なんなりとご相談ください。骨粗しょう症のお話し、これまでお付き合いいただきありがとうございました!