Column
院長コラム
骨粗しょう症による「せぼね」の骨折~手術治療~
2022年07月27日
こんにちは。
夏休みだというときに合わせたかのように、新型コロナウイルス感染症が再び大流行しております。先日は小松市の集団接種のお手伝いをさせて頂きましたが、感染拡大を受けてか多くの方が接種に来られていました。当院も感染対策に万全を期して診療に当たらせていただいております。
さて、骨粗しょう症についての次のお話、今回は骨粗しょう性椎体骨折の外科治療についてお話しします。
骨折した椎体の骨癒合が得られなかったり、骨折によって背骨の変形が高度に遺残したりしたために疼痛が強く残ってしまい、鎮痛薬などの治療でも日常生活動作の改善が得られない場合は、外科治療(手術)が必要になる場合があります。
骨折の形態や骨の状態、患者さんの体力、脊柱全体のバランス、など様々な要素を検討し手術治療を行います。
対象が高齢の方が多い(骨粗しょう症なので、当然そうですが…)ため、なるべく負担が少ない方法での手術が望ましいのはいうまでもありません。
そこでよく行われる方法が、経皮的椎体形成術です。これは、骨折して癒合しなかった椎体の骨折部に、背中側から専用の針を刺してセメントを注入するものです。
大きな問題がなければ30分程度で施行される、もっとも侵襲の小さい手術です。
セメントを入れることができない椎体の形であったり、セメントのみでは脊柱の支持性が担保できないと予想される場合には、人工骨やセメントを骨折部に充填したうえで、背骨にスクリューやロッドを入れて内固定を追加する方法(椎体形成術+後方固定術)も広く行われます。スクリューやロッドを入れる分、手術時間は長くなり、1時間から2時間程度要することが多いですが、以前よりは体に対する侵襲が少なく手術が行われるようになってきています。
これらの低侵襲な手術では対応困難なもの、例えば背骨全体の配列が大きく破綻してしまったものには広範囲脊柱固定術に骨折椎体の骨切り術が必要になることもあります。このような手術は場合によっては手術時間が8時間を超えるような大がかりなものになり、手術に耐えうる体であるかどうか、手術前に十分な吟味が必要になります。
上の写真は私が大阪大学医学部附属病院に勤務していた時の手術症例ですが、術後全身管理も重要となる大がかりな手術のため、このような手術にまでなるとどこでもできるというものではありません。
いずれにせよ、こういった手術はもちろん避けて通ることができればそれに越したことはありませんよね。
そのためには、骨折しにくい骨の強度を保ち続けることが大事であり、日ごろから(骨折を起こす前に)自分の骨の状態を知っておくことが大事です。骨折してから痛い思いして治療を開始するより、痛い思いを未然に防ぎたいものですよね。
当院ではWHO(世界保健機構)や日本の骨粗鬆症診断ガイドラインでも推奨されている大腿骨と腰椎の骨塩定量が同時に可能な骨塩定量検査を導入しております。
受診当日に検査可能ですので、「転ばぬ先の杖」ならず「骨折する前の検査」、としてお気軽にお申し付けください。